「ちょっと来い、長尾」

「へ?」

 小椋大樹にそう言われたかと思えば、私は腕を捕まれ廊下にひきずり出された。

「な、なんのつもり?」

「いやさぁ、さっきのことで誤解が――」

「何、照れ隠し!?」

「だから、あいつのことは好きとか言う以前に――」

「別にあんたの恋事情なんてどうでも――」



「紅子とはイトコなんだよ!」


 イトコ……
 従姉妹……
 従兄弟……

「イトコぉー!?」

「声でけーよ」

「だって、イトっ、イ……イトコンニャク!?」

「いや糸こんにゃくじゃないから」



 え、え、私……てっきり――


「ごめんっ」

 自分の勘違いをようやく自覚して、急に恥ずかしさが込み上げてきた。
 呆れたように苦笑いする小椋大樹。

「それを勝手に恋だ愛だって騒ぎ立てて……」

「ごめんってぇ!」

「笑い堪えるの必死だった」

「S! Sだ、ドS!」

「SとかMとかは関係ないだろ」