蹴っておいて、何言ってんの?

「手出したのそっちじゃん!」

「手出させたのは誰だよ」




「やめて二人共……私の為に……」

「は?」

 横から聞こえた紅子ちゃんの言葉に、男子との口論を一旦止めて紅子ちゃんを凝視する。


 紅子ちゃん、頭大丈夫?
 何、悲劇のヒロインみたいなの演じてるの?
 友達とはいえ……どん引き。

「あ、悪い……」

 男子も男子だ。
 何顔赤くしてるのさ。



 キーンコーンカーンコーン……

「やべ、チャイム鳴った」

「戻ろ戻ろ」

 チャイムを合図に、いつの間にか周りに集まっていた大量の野次馬が、それぞれの教室へ戻っていった。

「私も、戻るね」

 紅子ちゃんはケロッと言う。

「んじゃ……俺も」

 男子が紅子ちゃんに同調して去っていく。



 私は、

「――あいつ絶対紅子ちゃんのこと好きなんだな」

 と思いつつ教室に入っていった。