「だって長尾がいろいろ言ってたじゃねーかよ!」

 男子が反論する。

「言ってただけで、私は悪くないし!」

 事情をよく知らない奴に、どうこう言われたくない。

「っていうか謝れよ」

「は、何で? 誰に?」

「泣かしたじゃねぇかよ」

「あっちが勝手に泣いただけ」

「は、てめぇふざけんなよ?」

 男子が私に近付く。
 私は数歩後退りながらも、強く睨む。


「っていうかあんた、紅子ちゃんのこと好きなの? 必死になっちゃって、かーわいい」

 にやりと笑ってそうからかってみる。

「――っんな訳無いだろ! いい加減にしろよ!」

「きゃ――」


 想定外の出来事だった。
 男子が直接攻撃を仕掛けるなんて。

 男子は私のお腹目がけて蹴りを放った。
 私はそれを華麗に避ける――筈も無く、直撃した。

「痛っ」

 衝撃に耐えられなくて、体をくの字に曲げて座り込む。

 あり得ない……普通このくらいで女子に手を出す!?

 私は男子を睨み付ける。

「何だよ、俺は悪くねぇから」