「だからごめんって言ってるじゃーん」

 これだけ言ってもヘラヘラしている紅子ちゃんの態度に、私の堪忍袋は爆発。

「謝れば許されると思ってんの!? 紅子ちゃん他の友達にもこういうことしてるんだよね!? まじで、友達無くすよ!?」

 私はここまで言って、ハッと口をつぐむ。

 紅子ちゃんは俯いて、肩を震わせていた。


「そこまで言うこと無いじゃんっ! ひどい……」

「はぁ? ひどい? 私は本心を言っただけ!! あんたの方がよっぽどひどいわよ!」

 そこまで言って、目を見開く。

「ひどいよ……」


 ――紅子ちゃんは、泣いていた。
 ポロポロと涙が床に落ちると、だんだん人が集まってきた。

 そうだ、ここは休み時間の賑やかな廊下。
 異変を感じた野次馬が集まるのに時間はかからない。

「どうしたの、紅子?」

 昨日、トイレに居た早紀という女の子が紅子ちゃんに駆け寄る。



「なんだなんだぁー?」

「なんかさぁ、長尾が泣かせたっぽい」

 野次馬の男子の一言に、私は振り向く。
 私が睨むと、男子は悪怯れた様子も無く言う。

「だってさぁ、長尾がさんざん悪口言ってたじゃん」

 悪口言ってた?
 どういう耳してんの?

「耳鼻科行けよ。悪口とか一つも言ってないし」

 キレてる私は喧嘩腰。
 その言葉は男子をムカつかせたようだ。