「いや……ダメ、じゃないけど――」

 のぞみは何だか歯切れが悪い。

「一体何なのぉ?」


「――多分、そのCD戻って来ないよ」

「朱羅っ、何で?」

 友達の朱羅が躊躇いがちに言った言葉に、私は反応する。

「紅子ちゃんって、もの貸しても返してくれないんだよね……」

 のぞみも言った。

「返してくれないの? って聞いてもそっぽを向くしさぁ」

 朱羅も文句を言った。

「え、何――皆紅子ちゃんに何か貸したことあるの?」


「ある。体育の時間ゴム貸してって言われて貸した。二週間経つけどまだ返ってこない」

 朱羅が言った。

「あるよ。その本おもしろそうだから貸してって言われて貸したけど、もう一ヶ月戻ってきてない……」

 のぞみが言った。


「あ、そういえば私もこの前シャーペン――」

「私も! 何かそのメモ帳可愛いねーとか言ってきて――」

「そういえば、まだ紅子ちゃんから三百円返してもらってない――」

「私もマニキュア――」

「それなら私も――」

「私も――」

「俺も――」

「先生も――」

「先生も!?」

 ……………………

「――って多いわ!」