「あ、たっくん、ここ。」
“寺田家の墓”
そう書かれたお墓の前で、足を止める。
「敦史と一緒にね、赤ちゃんもここにいるの。
2人で一緒なら、寂しくないでしょ。」
「そっか。
お参りしよう。」
お花とお線香をお供えしたあと、気を遣ってお墓の前から離れたたっくん。
『気が済むまで、話しておいで。』
お墓の前にしゃがみこみ、話しかける。
「敦史、赤ちゃん、久しぶりだね。
もう6年も経ったんだね。
守ってあげられなくて、ごめんね。
2人の分まで、幸せになるからね。
2人で見守っててね。」
これからも、二人のことを忘れることはない。
一度愛し合い、将来を約束したから。
つらかった思い出があるからこそ、今の私がある。
「敦史、ありがとね。」