『まさか貴様が、魔女と人間が戦争をしていたことどころか、魔女すら知らなかったとはな…』


皿に盛りつけられた少し焦げたスクランブルエッグをスプーンで弄びながら、ソードウィッチは隣に座るリディルに呆れた表情で目をやった。


『すみません…。
幼少より外には出られなかったので、世間のことは何も知らないんです…』


申し訳なさそうにリディルが言う。


『貴様の両親は、貴様が外に興味を持たぬように、手入れに時間のかかる大邸宅を与えたわけか。両親はどれくらいの頻度で貴様に会いに来るんだ?』


ソードウィッチの問いかけに、リディルは暗い表情で俯いた。


『3年前に、この家に来てから1度も…』


そこで言葉に詰まったリディルにソードウィッチは深い溜め息をついた。


『つまり、見捨てられたというわけか…』


『違います!!』


ソードウィッチの言葉をリディルは身を乗り出し強く否定した。


『母さんも父さんも…
忙しいから会いに来れないだけなんです…。
でも…でも…毎年、僕の誕生日には本やケーキをくれるんです』


『それも、メイドが庭に持ってくるのだろう?』


ソードウィッチがそう言うと、リディルは再び俯いてしまった。


『現実を見ろ。貴様は捨てられたのだ』




(ここが外界と遮断されているのなら、わざわざコヤツを殺す理由もないか…)


ソードウィッチは窓際に立て掛けた銀剣に視線を流すと、すっかり冷えてしまったスクランブルエッグを頬張った。