『ソードさん!?』


リディルの声で、ソードウィッチは我に返った。

見ると、すぐ目の前には驚いた表情で微動だにしないリディルの顔がある。


(眠っていたのか…)


先ほどまでの出来事が、過去を再現した夢だと知ったソードウィッチは、少し安心したように溜め息をついた。


『あ…あの、ソードさん…その、放してもらえますか?』


『む?』


そう言われて、ソードウィッチは自分が両手でリディルの襟首を掴んでいることに気がついた。


『ああ、すまんな…』


慌てて手を放したソードウィッチは、ふと何かの違和感に襲われた。


いつのまにか高価そうな毛布がかけられている。
だが、その柔らかい感触がやけにダイレクトなことに、ソードウィッチは誘われるように毛布を捲ってみる。


『あ…あの、ソードさん…違うんです、これは…』


明らかに動揺しているリディルは、ゆっくりと後退りしていく。


『き、きき貴様ぁ〜…』


ワナワナと肩を震わせたソードウィッチは、ゆっくりと立ち上がる。


『ひゃあ!!』


毛布がソードウィッチの体から滑り落ちるのと同時に、リディルは両手で自分の顔を覆った。


『妾の服はどうしたぁあああああ!!』



下着姿のソードウィッチはツカツカとリディルに歩み寄るなり、再びその襟首を掴んだ。


『勝手に脱がせて申し訳ありません!!
でも…濡れていましたし、怪我の治療も必要でしたので…』


リディルにそう言われ落ち着いて見ると、身体の至るところに包帯を巻かれ、左目にはガーゼの眼帯がはめられていた事にソードウィッチは気がついた。


『ふん…!』


ソードウィッチはリディルを解放すると、ドカッとソファーに腰を下ろした。


『それにしても、元気になられたようで良かったです』


リディルは襟元を整えながら安堵の表情を浮かべた。


『妾はどれくらい眠っていた』


ソードウィッチは窓際に立て掛けられている愛剣を見つめながらリディルへと問うと、リディルはその窓際まで歩き、閉ざされていたカーテンを開けた。


『もう、朝ですよ。
昨夜までの雨が嘘のようです』


射し込む陽光を背に振り返るリディルは、美しく優しく微笑んだ。