『あら?キュアをどこに隠したのかしら?』
一人で銃を構えている少年に、ドラゴンウィッチは首をかしげて問う。
『さあね、途中ではぐれちゃったから分からないや』
少年はキュアウィッチが居る場所を悟られないように、僅かずつ横へと移動する。
ドラゴンウィッチはそんな少年を、冷徹な眼で見つめている。
魔女は近くにいる他の魔女の気配を関知でき、当然ながらドラゴンウィッチは、キュアウィッチがこの辺りに隠れていることを知っていたが、正確な位置までは把握できていない状態だった。
『ふ〜ん…まあいいわ。アナタの絶叫を聞けば、あの子も出て来るでしょ』
ドラゴンウィッチがそう言って虚空に手を翳すと、空間が裂け、そこから蛇のような姿をした巨大なドラゴンが現れた。
そのドラゴンはズドンと地面に落ちると、首をもたげて少年を睨んだ。
『逃げてもいいのよ?まあ、逃げられないと思うけど』
ドラゴンウィッチは魔力により、大小に関わらず無数のドラゴンを召喚できる。
ドラゴンウィッチが率いるドラゴンの軍勢は、幾つもの盗賊団や王都に逆らう武装組織を次々と壊滅に追いやっており、彼女は数十年前から始まった王都による強権政治に拍車をかけている魔女の一人でもあった。
『さあ!そのガキを食い千切りなさい!』
ドラゴンウィッチの掛け声と共に、蛇竜が少年へと向かい滑り出した。
(せめて、ドラゴン一匹くらい道連れにしてやる…!)
少年はピストルの弾装に小型の爆弾を込めた。
後は、タイミングを見計らいトリガーを引けば爆発する仕組みだ。
目の前に迫る大口を開けたドラゴンに、少年は両手で銃を構えたまま覚悟を決めたように瞼を閉じた。
その瞬間、
闇夜に疾しる一筋の閃光が天より墜ちた。
―――ズドォオオオオン!!
もの凄い轟音を立て蛇竜が地に沈む。
ドラゴンウィッチも少年も、何が起きたのか理解出来ずに目を丸くして、蛇竜の頭を貫いた月光を反射させ煌めく1本の銀剣を見つめていた。
『辺境の森で道に迷うてしまったと思いきや…
どうやら妾は正しい道を歩んでいたようだな』
闇を切り取ったかのような漆黒のコートをはためかせた女が、少年の前に降り立った。
『貴女は…?』
突然現れた美しい女に少年は戸惑いながらも、どこか懐かしい香りと眼差しに不思議な安心感に包まれていた。
『少年よ、名は何と申す』
『え?』
いきなりの女からの問いに、少年は一瞬言葉に詰まった。
『カーチス…。
リディル・カーチス…です』
少年が名を告げると、女は満足気に微笑んだ。
『リディル…。
やっと…逢えたな…』
女はそう言うと、リディルの柔らかい髪にそっと触れた。
その瞬間、リディルは確信した。
(僕は…この人を知っている…)
一人で銃を構えている少年に、ドラゴンウィッチは首をかしげて問う。
『さあね、途中ではぐれちゃったから分からないや』
少年はキュアウィッチが居る場所を悟られないように、僅かずつ横へと移動する。
ドラゴンウィッチはそんな少年を、冷徹な眼で見つめている。
魔女は近くにいる他の魔女の気配を関知でき、当然ながらドラゴンウィッチは、キュアウィッチがこの辺りに隠れていることを知っていたが、正確な位置までは把握できていない状態だった。
『ふ〜ん…まあいいわ。アナタの絶叫を聞けば、あの子も出て来るでしょ』
ドラゴンウィッチがそう言って虚空に手を翳すと、空間が裂け、そこから蛇のような姿をした巨大なドラゴンが現れた。
そのドラゴンはズドンと地面に落ちると、首をもたげて少年を睨んだ。
『逃げてもいいのよ?まあ、逃げられないと思うけど』
ドラゴンウィッチは魔力により、大小に関わらず無数のドラゴンを召喚できる。
ドラゴンウィッチが率いるドラゴンの軍勢は、幾つもの盗賊団や王都に逆らう武装組織を次々と壊滅に追いやっており、彼女は数十年前から始まった王都による強権政治に拍車をかけている魔女の一人でもあった。
『さあ!そのガキを食い千切りなさい!』
ドラゴンウィッチの掛け声と共に、蛇竜が少年へと向かい滑り出した。
(せめて、ドラゴン一匹くらい道連れにしてやる…!)
少年はピストルの弾装に小型の爆弾を込めた。
後は、タイミングを見計らいトリガーを引けば爆発する仕組みだ。
目の前に迫る大口を開けたドラゴンに、少年は両手で銃を構えたまま覚悟を決めたように瞼を閉じた。
その瞬間、
闇夜に疾しる一筋の閃光が天より墜ちた。
―――ズドォオオオオン!!
もの凄い轟音を立て蛇竜が地に沈む。
ドラゴンウィッチも少年も、何が起きたのか理解出来ずに目を丸くして、蛇竜の頭を貫いた月光を反射させ煌めく1本の銀剣を見つめていた。
『辺境の森で道に迷うてしまったと思いきや…
どうやら妾は正しい道を歩んでいたようだな』
闇を切り取ったかのような漆黒のコートをはためかせた女が、少年の前に降り立った。
『貴女は…?』
突然現れた美しい女に少年は戸惑いながらも、どこか懐かしい香りと眼差しに不思議な安心感に包まれていた。
『少年よ、名は何と申す』
『え?』
いきなりの女からの問いに、少年は一瞬言葉に詰まった。
『カーチス…。
リディル・カーチス…です』
少年が名を告げると、女は満足気に微笑んだ。
『リディル…。
やっと…逢えたな…』
女はそう言うと、リディルの柔らかい髪にそっと触れた。
その瞬間、リディルは確信した。
(僕は…この人を知っている…)