(くっ…!ドラゴン…ウィッチ…!)


少年が睨むソレは、満月に照された漆黒の巨大なドラゴンに跨がる一人の魔女だった。


『あ…あ…』


キュアウィッチは恐怖に染まる表情で、ドラゴンウィッチを見つめたまま動けずにいる。


『キュアは特別な魔女なんだから、盗んじゃ…ダ・メ・よ』


ドラゴンウィッチは邪悪な笑みを浮かべて二人を見下ろした。


『いや、貰っていくよ』

少年は腰のホルスターからピストルを抜くと、銃口をドラゴンウィッチへと向けた。


『あ〜ら、そんなオモチャが私に通用するかしら?』


ドラゴンウィッチがそう言うのと同時に、少年は引き金を引いた。


―――ターン!


銃口から飛び出した弾丸はドラゴンウィッチより遥か手前で白い霧へと姿を変えて一瞬にして辺りに立ちこめた。


(これは…視界を奪うのが目的だったのね…)


ドラゴンウィッチは唇を噛み、乗っているドラゴンの頭を強く叩いた。


『あのガキを噛み殺しなさい!!』


そのヒステリックな声に煽られるかのように、巨大なドラゴンが闇夜を切り裂かんばかりに吠える。


『ドラゴンウィッチ様!!二人は向こうの山林に逃げ込んだ模様です!!』


駆けつけた兵が怯えながらもドラゴンウィッチへと声を投げる。


『この役立たずども!!
ホント、人間って使えないのね!!』


ドラゴンウィッチはそう吐き捨てると、翼を広げたドラゴンと共に夜空へと浮かび上がり兵が指した山林を睨みつけた。


『絶対がさないわよ…キュア…』