二人でフラフラしながら暗い雑木林に囲まれた一本道を抜け、
その先の小高い丘の上にある巨大な屋敷の前にたどり着いた時は、
雨はやみ、空の雲の隙間から月が姿を見せていた。


道中、リディルと名乗った少年にソードウィッチは己をソードと名乗った。


『この屋敷には僕しか住んでいません』


開放されっぱなしの鉄門の所で屋敷を見上げたソードウィッチに、リディルは何かを察するかのようにそう告げた。


『こんな立派な屋敷に一人でか?』


ソードウィッチの問いかけに、リディルは笑顔で頷いた。


それを信じたわけではないが、何にしてもとにかく休みたかったソードウィッチは、それ以上何も訊かなかった。


屋敷に入ると、そこは広大なリビングだった。


『ここで休んでいてください。
包帯とタオルを持ってきますので』


リディルは、ソードウィッチをソファーに横たえると、急いで奥の部屋へと走っていった。


(確かに…人の気配は感じないな…)


ソードウィッチは、特に何も置かれていない静まりかえったリビングを一通り見回すと、そっと目蓋を閉じた。




―――ゴトン


ずっと握りしめていた剣が、指からスルリと抜けて木製の床へと落ちた。