『なっ…!!フレア貴様!!何のつもりだ!!あの屋敷には人間がいるのだぞ!!』


表情を一変させたソードウィッチは、フレアウィッチへと怒鳴り声を上げた。


『フフ…言ったでしょ?処刑…って。貴方と、貴方をかくまっていた大罪人を処刑するのよ』


フレアウィッチは愉しそうに再び火球を作る。


『ま、すぐに後を追わせてやるから心配すんなや』


アイアンウィッチがそう言って、ソードウィッチとの間合いをゆっくりと詰め始めた瞬間、突如何かが空気を張りつめさせた。


(なんだ…?)
(…!!)


まるで、周りの空間の温度が急激に低下したかのような感覚に、アイアンウィッチとフレアウィッチの全身はえもいわれぬ寒気に襲われた


『貴様ら』


ソードウィッチの怒りに満ちた瞳が、二人を捕らえている。
それは紛れもなく、かつて魔女の頂に立っていた暴君、ソードウィッチの姿だった。


(バケモノ…)


フレアの火球が風に揺らぐ。


魔力は魔女の精神状態と密接にリンクしており、この揺らぎはフレアウィッチの恐怖心を投影していた。


『確かに、面白くなってきたじゃねーか』


アイアンウィッチは違っていた。


手を痺れさせる恐怖を、足をすくませる恐怖を快感に変え、その魔力を高めさせてゆく。


―――ザッ!!


(来たか…!!)


ソードウィッチが動く瞬間、アイアンウィッチは攻撃に備えて構えをとった。


だが、ソードウィッチが疾風の如く向かった先は、アイアンウィッチの方ではなく、ましてやフレアウィッチの方向とも違っていた。


『あ?』


拍子の抜けた表情のアイアンウィッチは、燃え盛る屋敷へと走って行くソードウィッチを見つめる。


『フフ…助けるつもりかしら?』


ここぞとばかりにフレアウィッチは幾つもの火球を作り出すと、ソードウィッチが入って行った屋敷に更なる炎を追加してゆく。


『フフ…フフハハハハハハ!!
馬鹿な女!!人間と仲良く灰になるがいいわ!!』


フレアウィッチは狂ったように笑いながら、炎を撃ちまくった。