…今ならまだ間に合う


そう考えながらも、体は先に動いていた


走って走って…


皐月くんらしき人とさっきの女子らしき人の後ろ姿をとらえた


「皐月くんっ!!」


そう呼んだ声が響いた

皐月くんの耳にも届いたようで、彼は足を止めた


私は、ハアハアと息を切らしながら皐月くんのもとまで走った


「どうしたの?杏奈ちゃん」

皐月くんだけでなく、一緒にいた女子も目を開いて驚いている



私は息が整う間もなく、言った


「皐月くんがっ……何で…変わっちゃったかは……わからない」


少しずつ息は整い出すが、走ったために熱くなった顔はなかなか戻らない


「でも……でも放っておけない、皐月くんのこと」


皐月くんはフッと微笑った


「俺を縛っておくつもり?」


「違うよ……変えてみせる」


私がそう言うと、再び驚いた顔をする皐月くん


「昔のように戻ってとは言わない…でも現在のままじゃ、誰も満たされない…報われない」


私と皐月くんは互いに目を逸らさず、見つめ合う


「私が変えてみせる。だから見てて。この世界が、この景色が、美しく見える日まで目を逸らさないで」