「さっきはお母さんが変なこと言ってごめん」

「ううん、そんなこと。
小野くんのお母さんって、明るくていいお母さんだよね」


夕方になって小さな虫が多くなってきたグラウンドの端の方を歩きながら、首を振る。


「......うん。だけど、気を使わせたみたいで」

「別に、気を使って言ったわけじゃないよ」


本心だから、とは言えなかったけど、精一杯勇気をふりしぼって言ってみた。

......こんなんじゃ小野くんには伝わらないのは分かってるけど。


「......好きな人いるの?」

「いるよ......ってええ!?好きな人?」


それでも私にしてはがんばったと一人で満足していると、思いがけない言葉に小野くんの顔を見る。

だけど、見ても相変わらず無表情なその横顔からは何を考えてるのか分からなかった。


しかも......、聞いといて放置?
好きな人いるのからのー、無言?


「小野くんこそ、まるちゃんのことまだ好きなの?
それとも他に気になる人できたとか......」


意味深なことを聞いといて無反応の小野くんにしびれを切らし、もう一生分の勇気使ったんじゃないかってくらいにがんばって私から聞いてみる。