「そうだと思ったわ、野球ばっかりなんだから。
あみちゃんは今は彼氏いるの?」

「いえ、今は特には......」

「じゃあちょうどいいじゃない。
あなたたち、付き合ったら?」


ひいー......っ。

何がどうちょうどいいのか分からなかったけど、とんでもないことを言い出した小野くんのお母さんに、ドアをあけて車から逃げだしたくなった。


「変なこと言うのやめて。
そんなヒマない」


あれ?ヒマがないからなの?

てっきりもっといつものようにバッサリ切られて心を折られるかと思ったら、今日はそんなに心が折られなかった。

お母さんの手前、気を使ってくれたのかもしれないけど。


相変わらず窓の外を見たままの小野くんの考えてることは、どれだけ考えても分かりそうにない。


「違う部活の子だったらそうだけど、同じ部活なんだからいつでも会えるんじゃないの?
ねぇあみちゃん、うちの子どう?」

「え......いやいや......その、光栄です。
け、ど......、小野くんの方がお断りなんじゃないかと。あはは......」


光栄です、って何だ。

ミラー越しにニコニコしているお母さんと目が合って、苦笑いしながら、わけの分からないことをモゴモゴと言い訳する。