小野くんと一緒の車に乗ったとはいっても、話しているのは私と小野くんのお母さんのみ。

小野くんは全く会話に入ってこずに、ひじをついてひたすら窓の外を見ている。

はぁ......、今頃にっしーとさほちゃんは盛り上がってるんだろうな。


なんでこんなことになったのか。こんなことになるなら、無難にヒロくんでもさっさと指名しとけば良かった。

友達の彼氏だから誤解されることもないし、少なくともこんなに気まずい思いはしなくてすんだはず。


「ねぇ、マサちゃん?
にっしーは女の子に優しいからモテそうじゃない?
彼女とかいないの?」

「さぁ......モテるんじゃない。
彼女は、今はいないみたいだけど」


......この話題は微妙に気まずい。
気まずい雰囲気の車内にお母さんがふった話題は、さらに気まずい話題。


運転席からミラー越しにニコニコしているお母さんに、小野くんは窓の外を見たまま。


「ふぅん、でもにっしーだったら、すぐに彼女できそうよね。マサちゃんはいないの?」


相変わらずニコニコと愛嬌のあるお母さんに、小野くんはそっけなく答える。
いない、と。