三塁ランナーはヒロくんが投球動作に移ると早めのスタートを切ったけど、四番バッターが振ったバットは完全にタイミングをずらされ宙をきった。


「バッターアウト!ゲームセット!」


空振り三振。
ランナーを三塁に置きながらも、無得点に抑え三振にとったこの瞬間、西校の勝ちが決まった。





「先、ダウンいけ」


挨拶が終わり、ベンチに戻ってきたみんなは先生の指示で靴を替えた人から、グラウンドにまた出戻っていく。


「ヒロシ先輩、ナイスピッチ!」

「なにがナイスピッチ、だよ。
お前、一年のくせに生意気」


ベンチの隅の方で、声をかけてきたミッチーの頭をヒロくんが軽く叩いている。

どうかしたの、と声をかけると、二人ともいっせいに私の方を振り向いた。