うそだ......、あのプレッシャーに弱い小野くんが、まさかこの場面で、ツーランホームランを打つなんて。


ホームベースを踏んだいつき先輩がベンチに帰ってきてからも、まだ信じられない気持ちでベースを一周する小野くんを見つめる。


小野くんが戻ってくると、お前すげぇな!とかなんとか思いきり背中を叩かれたり、ハイタッチで手荒くベンチのみんなに出迎えられた。


みんなに一通り歓迎されたあとに、私のところにもきたので、軽く彼の手を叩く。


「......ナイバッティン」

「......うん」


自分でも信じられないのかなんなのか、真顔の小野くんと一瞬だけ目を合わせた後、スコアブックのダイヤを赤ペンでぐるっと囲む。

そのダイヤの中にHRと、私も小野くん同様真顔で書いておいた。ただ冷静な態度とは反対に、それを書く手は震えていたのだけど。