「にっしー出てってよ......、せまい」

「いま俺でてったら、先生にあみたちがきてたことバレるけどいいの?」


う......、それはマズイ。

夜に男子の部屋に忍び込んだあげく、男子と二人きりで押し入れに入ってた、なんて先生にバレたら。

それはもう考えるだけで......考えたくもないくらいおそろしい。


ああどうかうまくごまかしてください、小野くん戸塚くん。いや!小野キャプテン様!戸塚王子様!


祈りながら、待てど暮らせど押し入れの外からは何ひとつ動きがない。


「ねぇ、何にも聞こえないね。もう先生いったのかな?」

「どうだろ。まだもう少し隠れてた方が安全だと思うよ」


だよね、って言ったのはいいけど、いい加減この状況も限界だよ。

ちょっとでも腕伸ばせば、にっしーの体にあたっちゃいそうだし、息づかいまで聞こえるくらい近い。

気まずいんだけど......。


「あのさ、にっしーにこれもってきたんだ。
カステラ。
にっしー甘いもの好きだったよね?」


なぜにこの状況で渡すのかってくらいのありえない状況だけど、渡しちゃう。そうでもしないと、心臓おかしくなりそう。

本当は一緒に食べようと思ってたんだけど、この際仕方ない。