「そうは言ってもですね〜。
 よく考えてみてくださいよ。

 女がそんなこと言われて、じゃあ、どうぞって言うと思ってるんですか」

「それは、訊かない方がいいということか?」

「そんな意味なわけないじゃないですか」
と莉王は疲れたように項垂れる。

 允がその肩をぽんぽんと叩いて言った。

「よく考えてみろ、莉王。

 お前、さっき、俺のことが好きか嫌いかわからないと言ったじゃないか。

 俺もそうだ。

 どうなのかよくわからない」

 だから、もう一度、してみよう——。

 そう言いざま、允は先程掴んだ手を強く握り、莉王に口づけてきた。

 隙を突かれたからか。

 莉王自身、迷っていたからか。

 そのまま逃げなかった。

 私はこの人のことをどう思っているのだろうか。

 そんな不安が何処かにあって、確かめてみたい気もしていた。

 允が自分を抱き締める。

 言われてみれば、こうして居ても、別に厭じゃない気もするのだが。