「……おやすみなさい」

 莉王は足音をさせないようにして、寝室に向かったようだった。

 よし、スマートにすべてを終わらせた。

 忍の指示通り。

 そのとき、ふと、莉王の言葉が頭に甦った。

『忍さんに言われた通りに動いている貴方とデートしても。

 忍さんとデートしてるみたいじゃないですか』

 いきなり、跳ね起きた自分に、莉王は、びくっとして振り向いた。

「どうしたんですか。
 なにかうなされたんですか。

 甦ったゾンビみたいに起きてきて」

 ロマンの欠片もない莉王の口調に、些か笑ってしまう。

 こちらに戻ってきかけた莉王が足を止めたので、手招きをした。

 莉王は己れを指差し、小首を傾げたあとで、やってきた。

「今日はお前になにもするなと言われてたんだ」

「忍さんに? 及川さんに?」

 案の定、莉王はそう訊いてくる。