允がリビングのソファで丸まって寝ていると、風呂から出て来たらしい莉王は呼びかけてきた。

「允さん?
 本当にお風呂、入らないんですか?」

 返事しないでいると、莉王は寝室からもう一枚、毛布を持って来てかけてくれた。

 すごくいい匂いが側でした。

 何をしているのか、しばらく動かない。

 やがて、莉王は笑ったようだった。

「こうしてると、全然生意気そうじゃない」
と呟く。

 俺のことか。
 生意気ってなんだ。

 俺はお前より、随分年上なんだが。

 そう思ったが、何故だか厭ではなかった。

 きっと莉王の口調が、起きているときと違い、優しげだったからだろう。

 人間の裏の顔が恐ろしいときもあるが。

 莉王に関しては、自分が見ていないときの方が穏やかだ。

 まあ、自分の態度が莉王をかたくなにさせているのだろう、ということは、なんとなくわかるが。