「いや、やっぱり、かけないでください」

「なんでだ」

「忘れてましたが、私、結構、好きなんです、眼鏡かけた人」

「……じゃあ、かけようか」

「やめてください」

「だったら、かける」

「いやもうっ、待ってくださいよーっ。
 結構酔ってますねっ」
と中に戻ろうとする允の腕を掴んだ。

 腕に触れた瞬間、允がこちらを振り返り、見下ろした。

 つい、手を離して、逃げそうになる。

 もうちょっと自然に振る舞った方がいいとわかっていて。

 それにても、こうして、コンタクトを外していると、近くてもよく表情が見えないな、と莉王は允の顔を見つめる。

 すると、

「……好きに風呂も寝室も使っていいぞ、俺はもう寝る」

 いきなり允はそんなことを言い出した。