「何故だ」

「眼鏡姿を人に見せたくないからです」

 そう言い、允の前に腰を下ろした。

 允が好きだからとか、そういうのではなく。

 誰であろうと、極力見せたくないのだ。

 允はさっきのワインをグラスに注ぎながら、

「ちょっと見てみたい気がするが」
と言い出す。

「あのですね。
 世に言う『メガネっ子』とやらは、眼鏡の度が強くない人、オンリーです。

 私のようにレンズが厚いと、目が小さく見えて、全然可愛くないんですよ」

 コンタクトを入れて、伊達眼鏡をかけたい気持ちだ。

 眼鏡屋さんで、可愛いと思うフレームを選んでも、レンズを入れた途端、似合わなくなる。

 ふうん、と言う允に、

「允さんはコンタクトじゃないんですか?」
と問うと、

「そんなに良くもないが、コンタクトを入れるほどじゃないな。

 一応、眼鏡は持っているが」
と言った。

「それ、見たいですっ」

「何故だ」

 いや、あんたが私の眼鏡姿を見たいと言ったのと同じ理由だよ、と思った。