「可愛い。
 えーっ。
 これ、素敵」

 允を置いて寝室を出た莉王は、白い壁に設えられた食器棚を眺めていた。

「すごいセンスいい。
 絶対、前の住人のだわ」

「それは俺がセンスが悪いという意味か」

 霊よりも静かに背後に立っていた允に、ひっ、と息を呑む。

「いえいえ、そんなことはー」
と苦笑いした。

 允は所作にも品があるし、センスも悪くないと思うのだが、食器やインテリアには興味なさそうだった。

「なんか使うのもったいない感じだけど。
 これ、借ります〜」
と愛らしい和食器の小皿を二枚棚から下ろす。

 横に立った允が言った。

「覚悟は決めたのか」

「……なんのですか」

「此処に泊まる覚悟だよ」

「泊まるだけなら」

 そうか、と少し笑った彼は、上の棚から、少し大きめで薄いワイングラスを出してきた。