無防備なそこで、ぼうっと現れられたら、さすがに怖い。

 霊がああいう出方をするのは、やはり、生きた人間を驚かせたいからだろうかな、と思った。

 例えば、そう。

 驚かせて、すっきりするために。

「なにも居ません」

 一通り見た莉王は、それがいいことなのか、悪いことなのかわからない、と言うように、そう告げてきた。

 確かに、ほっとした反面、余計、どうしていいかわからなくなったのも事実だ。

 清香の霊は、もしや、自分に祟って出ているのではと思っていたのだ。

 そうだとするなら、彼女に謝りたいと。

 だが、誰も居ないと莉王は言う。

 もう一度、霊を探そうとするように、ベッドの下を覗こうと、莉王は屈む。

「そんなところに人間、入らないだろう」
と言うと、

「なに言ってるんですか。
 生きた身体じゃなくて、霊ですよ?

 何処にだって、入れますよ。

 貴方がそんなことを言うから、今、生きた人間がこの下に寝てるところを想像しちゃったじゃないですか」
と莉王は顔をしかめて見せた。