「そういえば、さっき、呑めませんでしたもんね、車があるから」

「お前は呑んでもよかったんだぞ」

「いえいえ、そんなー。

 一人が呑んでも美味しくはないです。
 美味しいです、このチーズ」

 別に言っていることはおかしくないのだが。

 ちょっと酔ってきたかな、と思い、見ていた。

「あの、おじいさまが此処に住まないとおっしゃって、貴方が此処に?

 放っておくと、もったいないからですか?」

「……ちょっと寺を離れたかったからな」

 そう言うと、莉王は笑顔を止めた。

 寺を離れたかったのは、清香のせいだと思っているのだろう。

 まあ、それもある。

 彼女が清香のことを知っているというのは、忍に聞いていた。

「お前を部屋に呼ぶときは、みんな緊張しないか?」

 唐突にそう訊くと、当然、
「何故ですか?」
と莉王は訊き返してきた。

「部屋の隅に誰か居るとか言われたら厭じゃないか」