美味しかった上カルビ。
しかも、奢ってもらってしまった。
まずい。
餌づけされつつあるな、と莉王は思った。
車に乗ると、走り出してから、允が言った。
「何処かに行きたいという話だったが——。
うちに来るか?」
「え?」
「さっき、いきなり実家は厭だと言ったろう」
いや、そりゃ、言いましたけどね。
一人暮らしの部屋っていうのも、ハードル高いんですが。
「最初は実家に住まなくていいそうだから、もしかしたら、今のところに住むことになるかもしれないし。
見せておくのも悪くないかと思って」
「そうなんですか?」
「若い人は若い人だけでやりたいだろうし、私も自由にやりたいから、と母親が」
それはあるかもしれない、と思った。
昔と違い、今の姑は元気でお金も持っていて、多趣味な人が多いから、息子夫婦と一緒に暮らすより、元気なうちは自由にやりたいと考える人の方が多いらしかった。