「不満か」

「不満はないです。
 このデザートも美味しそうだし」
とデザートだけのメニュー表を眺め、莉王は言った。

「でも、もし、時間があるなら。

 何処か連れてってくれませんか?
 貴方が好むところに。

 貴方自身の人となりを知りたいんです」

 いや、まあ、もう充分知っている気はするが。

 このままだと確実に、なんだかわからない間に実家に連れていかれる。

 及川たちにぐいぐい押されたら、この話、止まらなくなる気がした。

 この人も爺さんに弱いようだが、私も弱い……。

 及川たちの後ろで控えめに座っていた爺さんとかがヤバイ。

 しわしわで温かい手に手を取られ、

『允さんを頼んます』
とか頭を下げられたら、断れないではないか。

 しかし、他のことならともかく、結婚だ。

 簡単に流されるわけにもいかない。