「幽霊の店員が居るのか」
と允は廊下を見た。

「誰も何も頼まないのに、忙しそうにしてますよ」

「じゃあ、お前、頼んでやったらどうだ」

「それは駄目です。

 おしぼりを持ってきてくれとか言っても、持ってはこられないんですから、可哀想じゃないですか。

 ……どうかしましたか?」

 いや、と允は笑っている。

「霊って、ポルターガイストとか起こせないのか」

「いや、そう簡単には。

 第一、おしぼりがふっ飛んできたら、他のお客さんがびっくりでしょう?

 それにても、霊の店員に物を頼めと言った人は貴方が初めてですよ」

 本当に変わっている、と莉王は思った。

 しかし、允のその変わっているところに落ち着くのも確かだ。

 余計な気を使わなくてもいいし。

「ところで、このお店は誰のお薦めですか?」

「何故、そんなことを訊く」

「貴方の後ろには、いろんなものが付いていそうだからです。

 背後霊のように」