允に連れられていった焼き肉屋は庭園の奥にあり、かなり高そうな店だった。

 予約してあったらしく、入り口に居るちょっとドスの利いた支配人みたいな男が案内してくれた。

 途中、人間国宝のような雰囲気の、髭の長いおじいさんを偉そうな人たちが、腰低く出迎えているのに遭遇したりして。

 なんだか緊張するな、と思ったのだが、部屋はすべて個室になっていた。

 とは言っても、完全に区切られてはいない。

 ドアではなく、壁の一面がまるまるなくて、店内と繋がっている感じだ。

 他の客とは視線も合わないし、これはこれで落ち着くか、と思った。

 目に入るのは、忙しそうに立ち働く店員くらいのものだった。

 それらを眺めながら、莉王はメニューを見ている允に言った。

「貴方は、簡単に霊が見えるとかって話をしますけど。

 そんな人間、怖くはないですか?」

「何故」
と允は言った。

「今も私には、店員さんが一人多く見えています。

 私は常に、人と見えてるものが違うんですよ。

 言いませんけど。

 そういうの、一緒に居て、なんだか厭じゃないですか?」