まったくもう、そんなものは見えていても、黙っててよね。

 今は居ない莉王に文句を言いながら、忍は後片付けを終えた。

 またあの裏口を見てしまう。

 ……聞くんじゃなかった、あんな話。

 まあ、どのみち、何も見えてはいないが。

 いつもそれが見えている莉王の世界はどんなのだろう、とふと思った。

 そして、きっと莉王は、強靭な精神を持っているのだろうな、と。

 自分など、裏口の霊には、少し離れたこの場所でも、厭な気配を感じるのに、より影響を受けていそうな莉王はケロッとしていた。

 霊か……。

 ほんとにそんなものが居るかどうかはともかくとして。

「会いたい人なら居るんだけどね」

 忍は誰にともなく、そう呟いた。