一人、店の後片付け歩していた忍は、さっきまで莉王たちが座っていた場所を見、思い出し笑いをしていた。
今日は陽気な夜だった。
普段は、しっとりと呑む客が多い店なのだが、たまにはあんな雰囲気も悪くないようだった。
常連の客たちも、機嫌良く帰っていったようだ。
カウンターに背を向け、グラスを戻したとき、ふいに、真人の言葉が耳に甦った。
『王様ーっ。
王様、聞いてくださいーっ。
卯崎允は人殺しですーっ』
「ひとごろし、か」
ゆっくりと口に出して呟いてみた。
いつまでもそれが口に残る。
ふと、裏口に視線が向いた。
莉王が悪い霊が居ると言った暗がりだ。
何も見出せないそこに、何故か視線を縛られる。
そのうち、俯く女の幻が見えてくる気がした。
やばい、やばい。
莉王ちゃんの暗示にかかってる。