「真人は絶対、とり憑かれないわよ」

「いいじゃないか。
 なあ、お前の福耳掴んで、安心して眠りたいんだよ」

「耳掴んで寝るって、赤ちゃんが落ち着く行為よね」

 一晩中掴まれる方は、たまらないと思うが。

「そんなこと言って、允さんだったら、オッケーするんだろ」

「あの人、そんなこと頼んでこないって」

「わかんないだろ。
 男なんて、意外と子どもっぽいとこあるんだから。

 今度、允さんが耳掴ませてって来たら、教えてよ」

 なんじゃ、そりゃ。

「ともかく今日は帰ってよねー」
と二人、揉めながら、夜道を歩く。