「しないわよ」

「お前が允さんと結婚したら、俺が泊めてもらえなくなるじゃないか」

「泊まらなくていいでしょ、別に」

「お前の側に居ると安心するんだよ。

 どうもこう、女を全面に出してる奴は長時間一緒に居ると疲れるから」

「短時間なら、そっちの方がいいんでしょ」

 いきなり失礼な奴だ、と思いながらそう言うと、そうそう、と真人は笑っている。

「こう、厭なことがあったときは、お前に膝枕してもらったり、手を繋いでもらったり、耳を掴ませてもらったりして、眠りたい」

「待って。
 その耳を掴ませてのくだりはなんなの?」

「さっき、耳掴んだら、気持ちよかった。

 福耳っぽくて」

 いいことありそう、とか言ってくる。

「じゃあ、掴まないで、拝んで」
と言うと、本当に、ははーっと拝んでくる。

 やめて……。

「でも、允さん、ずるいよ、お前と結婚するなんて」

 ずるいってなんだ?