「無視してたんじゃないよ。
 どうしていいのかわからなかったんだよ。

 清香さんは、何故だかわからないけど、卯崎さんに、霊障について相談してたんだと思う。

 卯崎さんを頼りにしてたっていうより、お寺の息子さんだから、相談したんだよ。

 年配のお坊さんより、卯崎さんの方が話しやすかったからだと思うよ。

 卯崎さん、口堅そうだしね。

 それから——

 あの人、ずっとそのこと気にしてるよ」

「え?」

「だから、私と結婚しようとしたの。

 私、霊が見えるから。

 真人、そこに突っ立ってると、そこの狭い路地のビールケースの陰から頭にビール瓶の突き刺さったおじさんが這い出してきてる。

 足首掴むよ」

 ひっ、とその路地に背を向け立っていた真人は凄い速さで飛んで逃げた。