そういえば、昼間、あの子たちに、わざわざ、真人の好きなものを教えていたな、と思い出す。

「なんでなのか、訊いてみなかったの?」

「訊けないよ。
 俺、覗き見してただけだから。

 俺はまだ子どもだったから、なんの相談にも乗ってあげられなかったけど。

 允さんにはそれが出来たのに。

 清香さんは允さんを頼りにしてたのに。

 あの人は、なにもしなかった。

 今でも思い出すんだ。

 境内の木の下で、傘をさしていたた清香さんを。

 途方に暮れたような顔で、落ちてくる雨粒を見てた」

 憧れの人だった、と真人は言った。

 允にとっての、花さんと同じだ。

「……卯崎さんは助けなかったんじゃなくて、助けられなかったんだよ」

 え、と真人はこちらを見る。