「清香さんはさ、物静かで綺麗な人だった。

 俺よりちょい年上でさ。

 憧れてたんだ。

 清香さんは、允さんに何か相談してた。

 俺、たまたま見たんだよ。

 允さんちの母屋の裏で、清香さん、泣きながら、允さんに何か言ってたんだけど、清香さんは、そのうち、怒って出ていった。

 それきり、みんなとも口をきかなくなって、いつも沈んだ顔をしてた。 

 穏やかで優しい人だったのに。

 あのとき、清香さんは允さんにすがりつくようにして、何か懇願してたのに、允さんはそれを拒絶したみたいだった。

 清香さんは、それからも何かずっと悩んでたみたいだった。

 なのに、允さんは清香さんに声をかけることもなく、知らんふりで通して。

 やがて、清香さんは自殺した。

 なんだでだかわかんないけど。

 清香さんは、允さんを頼りにしてたんだよ。

 ああ見えて、面倒見がいい人だと思ってたのに、なんで、清香さんを突き放したりしたんだろう」