静かに問う忍に、そうです、と真人は答える。

 忍を見上げ、
「やっぱり、忍さんは知ってたんですね」
と言った。

「そうだねえ。
 友だちだからね」

 ぽつりとそう言った忍は、允の友だちだからそう言ったのか、その清香という人とも友だちだから言ったのか。

 よくわからなかったが、それを追求できる雰囲気ではなかった。

「允さんがいい人だから、言えなかったし、誰にも。

 でも、なんだか黙ってられなくて。

 ……莉王が允さんと結婚するって聞いて、このままでいいのかって」

 いや、しないけど。

「このまま誰も知らないまま、時が過ぎて、みんな、清香さんを忘れてく。

 それでいいのかって」

「大丈夫、忘れないよ」
と忍が優しく微笑んだとき、少し、あれ? と思った。

 しかし、また俯いてしまっていた真人はグラスを見たまま、続けて言う。