「この王様の旦那様も昔は王子みたいだったんだよ。

 今ではすっかり落ち着き払っちゃってるけどさ」
と言う忍に、莉王が、

「旦那様じゃないですよっ」
と反論している。

 おしぼりを受け取りながら忍に、

「待って、忍さん。
 王子って、チャラついてるって意味?」
と言うと、酔っぱらいたちは、何を聞いても可笑しいらしく、ゲラゲラと笑っている。

 忍が言った。

「あのさ。
 恐ろしいことに、莉王ちゃん、まだ一滴も酒、呑んでないんだけど」

「こいつは、呑まずに酔っぱらいと同じテンションで語れる女なんですよ……」

 普段の呑み会の様子を知っている真人はそう言い、自分の酒を頼んだ。