ちょっと気が乗らないな。
店へと歩く真人は自分の足がかなりのスローペースになっているのに気づいていた。
莉王と呑むのは楽しいが、いろいろと訊かれそうだ。
まあ、そのために呼んだんだからな、と思う。
雨の中、あの人は立っていた——。
傘を差して、木の下で。
空からか、木からかわからない雨粒が落ちてくるのをただ静かに見上げていた。
あのとき彼女が着ていたのと同じ制服を見るのが厭で、自分は遠く離れた学校に行った。
サッカーの強豪校だから、と言い訳をして。
あのときの葬儀では、住職が忙しく、僧侶の資格をとったばかりの允がお経をあげていた。
まだ少年の面影を残したような允の綺麗な横顔に余計ムカついたのを覚えている。
あの人は最後まであんたのことを信じてたのに——。
だが、今、実際に允を前にすると、すべてが少年だった自分の言いがかりのようにも思えてきて。
そもそも、あのときのことを允は覚えていないかもしれないのに。
うわーっ。
開けたくねー、と忍の店の扉を前に思ったとき、どっと中から笑い声が聞こえてきた。