「みんなどっかで呑んでから、此処へ来るから」

「そりゃあ、一次会は付き合いがあるじゃん」
とラグビー部、と勝手に決めている男が言う。

 歳に見えたが、声は若かった。

「二次会は気の置けない連中とこの店へってことだよね」

「それは、どうもありがとう。

 なんか呑む?」

「なんか呑むって、お金とるくせに」
と言って笑っている。

「莉王ちゃんは?
 どうする?

 真人を待つ?

 それか、あいつ来たときには、もう虎になってる?」

「あの〜、私、そんなに呑みませんから」

 ときどき、呑みすぎると、右を向いて、左を向いたときに、右を向いていたときの記憶がなくなるだけだ。

 これを真人に言うと、危ないから、もう呑むな、と言われたのだが。

「じゃあ、ノンアルコールで綺麗なカクテルを。

 ……話ができないでしょ、あんまり酔ってちゃ。

 まあ、酔った方が話しやすいこともあるけどね」

 なにもかもわかっているように忍は言う。