「こ、こんばんは〜」

 莉王はそうっとそのチョコレートの扉を開けた。

 今、この暗くて狭い店のドアを押す方がまだマシ、と思われることが外であったので、スムーズに扉を開けられた。

 ほんとに夜の呑み屋街は物騒だ。

 だから、真人についてきて欲しかったのに、と思う。

 案の定、薄暗かった店内には、ラグビー部? と問いたくなるような男二人と、サラリーマン風の男がそれぞれ別れてカウンターに座っていた。

 グラスを棚に戻していた忍は、後ろに目でもあるのか、すぐに気づき、

「あれえ?
 莉王ちゃん、いらっしゃい」
と言ってきた。

「こんばんは」

「允も一緒?」
と笑顔で訊いてくる。

「いえ、それが……
 あの、柏木真人、ご存知ですよね?」