允は食べ終わると、急ぎの仕事があると言って、さっさと戻っていってしまった。

 残された二人でなんとなく渡り廊下を歩きながら、莉王は言った。

「ごめんね。
 いっぱい食べてもらっちゃって」

「いや、いいけど。
 ほんと変わんないよなー。

 相変わらずだよなー、あの人」
と後ろ頭を掻いている。

 真人の少し茶がかった髪が窓からの日差しに温まって、気持ち良さそうだ。

 思わず触りたくなる。

 近所の毛の長い犬と同じ感触がしそうな気がした。

「真人、いろいろ言ってたわりには、卯崎さんが嫌いなように見えなかったんだけど」

 少し迷って、真人は口を開く。

「俺さ、昔は允さんに憧れてたんだよ。
 あの人の、あのなんか飄々としたところに。

 俺とは正反対だからさ」

 ま、それは確かに。