それにしても、どうしたんだ、と問われても、朝のケーキで胸やけが、なんて、くれた人間には言えない。

 まあ、問題があるのは、ケーキじゃなくて、あの時間に食べた私だが。

 そう思ったとき、移り気な真人の会話は、もう勝手に切り替わっていた。

「允さん、寺に戻って跡を継ぐってほんとですか?」

「まあ、そろそろな」
とだけ允は言うが、その口調は重い。

 そういえば、忍が妙なことを言っていた、と思い出す。

『霊感があったら、誰でもいいわけじゃないよ。

 強い霊能者のオッサンがあいつを救えるわけでもないし』

 あのとき、『救う』という言葉の仰々しさに違和感を感じた。

 単に、見合いを断るために協力する、という話ではない、別の意味があるような気がして。

「そうですか」
と小さく言った真人を見て、不思議だな、と莉王は思っていた。

 夕べはあんなに允を罵っていたのに。

 いざ、こうして彼を前にすると、真人は普段からは想像もつかないくらい、大人しく従順だ。

 なのに、何故、あんなことを?