莉王もそれが聞こえたらしく、


「みんなよく社内の人の名前知ってるなあ」
と呟いていた。

 同感だ。

 自分は今の女たちの顔も名前も知らないし、莉王の名前さえ知らなかった。

 ずっと、社食でたまに見かける、霊感のある、よく笑う女、としか認識していなかったから。

「柏木さんって、乗り鉄かなあ。

 やだーっ。
 一緒に旅行に行きたーいっ」
とまだあの二人は盛り上がっている。

 横に居た莉王が、

「今の情報大丈夫ですか?」
と訊いてくる。

「ん?」

「いや、真人が鉄道好きって話」

「今は知らんと言ったろ。

 子どもの頃は、喜んでたぞ、車掌の帽子被って」
とと言うと、はあ、と気の抜けたような返事を返してきた。