じゃあ、あとで。

 そう言って通り過ぎて行った莉王を振り返り、允は、ほっとしていた。

 なんとか会話は出来るようになったようだ。

 だが、あの女、本当に十五発殴ってきそうだな、と思ったとき、その声は聞こえた。

「ええーっ。
 ほんとに!?

 今朝っ?」

「本当だって、天野さんと柏木さんが同じタクシーで来たんだってばっ。

 ちょっと遅れてっ」

「昨日、柏木さん、サッカーの試合だったよね?

 天野さん、打ち上げ来てた?」

 来てなかったと思うんだけど、と女子二人がひそひそと話している。

 サッカーの柏木。

 真人のことか?

「ええーっ。
 あの二人、どうなの?」

「確か、高校からの友だちって言ってたよね」

「そうなの?」

「前に柏木さんに聞いたことがあるの」
と片方の女子が言う。