気になっていた。

 昨日のことより、真人の言葉が。

『卯崎允は人殺しだ――』

 莉王が允を見つめると、允はびくりと叱られる前の子どものように震えた。

 その顔を見、
「痴漢か……」
と呟く。

 さっきのおじさんの言葉が頭に甦ったのだ。

 そういえば、この男は痴漢で強姦魔だった。

 莉王の中で、どんどん允の罪状が重くなる。

「莉王」

 そう呼び止められ、振り向いた。

 だが、允はなんと言おうか、迷っているようだった。

 だから、莉王は逃げずに彼を見つめて言った。

「殴っていいですか?
 十五発」

「……いいだろう」

「そうですか。
 じゃあ、あとで」

 そう言って別れる。