すると薫は目を伏せながら答える。


「…別に、普通の人だよ。」


そう言う薫の表情が少し温度を失うのが分かった。

その表情を見て、由佳は薫がこれ以上踏み込んでほしくない時に見せる表情だと察した。

だが和也はお構いなく続ける。


「へぇー。でもお前、アメリカに住んでたんだろ?じゃあ、親はアメリカ人なの?ん?日本人だっけ?」

「……。」


和也は薫のこれ以上踏み込むなレーダーを察知出来ない数少ない人間だということを、由佳は忘れていた。


「親と一緒にたまにアメリカ帰ったりすんの?ってか、薫って英語ペラペラなの?」

「……。」


薫の表情がだんだん険しくなっていく。


「アメリカってさぁ…」

「ねぇ桐島!!」


由佳は耐え兼ねて、和也の言葉を遮った。


「ん?何ー?」

「華代と奈津子も呼ばない!?4人で楽しく話そうよ! 」

「おっ、それナイスアイデア!」


和也が話に乗っかり、話を逸らすことが出来たので、由佳はホッと安心した。