本当に料理はどれもこれも美味しかった。

今まで味わったことのない上品な味わいで、由佳はこんな高級な料理は今日を最後に一生食べられないだろうなと思った。


「君、すごいね。」


由佳が美味しそうに料理を食べていると、和也の父は同じように隣で料理を食べている薫に向かって言った。


「魚の骨の取り方、お椀の置き方、箸使い、食す順番、和食のマナーが全て完璧だ。どこかで習ったの?」


和也の父のその言葉に、由佳は薫のほうを見た。

料理を食べることに夢中で全く見ていなかったが、確かに薫の皿の焼き魚の骨は綺麗に取り除かれ、食べ方もとても上品だ。


「…いえ、両親から少しだけ教わっただけです。」


薫がそう答えると、和也の父は感心したように言った。


「そうか。きちんとした教育を受けてきたんだね。そこまで完璧にマナーを弁えている人、ここに来る客でもほとんど居ないよ。」


すると和也が口を開く。


「そういや、薫の父ちゃんと母ちゃんってどんな人なんだ?1回も会ったことねぇなー。」